ただ、その韓ドラと決定的に違うのは、あくまで韓ドラが荒唐無稽なファンタジーでしかないのに対して、本作は人間を描くという基本に徹して、現代中国のリアルな日常が描かれ、何よりクオリティーが桁違いに高い。
その第一の功労者は何といっても脚本家だろう。
もともとドラマの母は映画であり、映画の母は演劇であって、その大元は戯曲だが、昨今のドラマのライターは、戯曲はおろか名作映画の脚本も読まずに、(不出来な)ドラマを観て、そのドラマの真似事をしているだけだ。
その点、本作のライターは、シーンのひとつひとつが演劇的であり、戯曲から多くを学んでいるのがよく分かる。
韓ドラの多くの台詞はスルーしても問題のない井戸端会議でしかないが、本作で語られる台詞には一言一言に意味があり、それを語る人物の微妙な心理状態まで描き込んでいる。
ストーリーそのものは他愛のない日常であり、そこに生きる人々の悲喜こもごもを淡々と描いているだけだが、作り手の洞察力が、それをじつに味わい深いものにしている。
かっての小津作品のように。