その手の作品で話をうまく膨らませていく物も多いので全てダメと言わないが、本作はそこからの発展があまり見られない
後からその特殊な状況を紐解く解答を出そうと肉付けしようと本来設定上重要なのでもっと考えるべき"殺し屋”という存在に対する解像度が余りにも低いのでロールプレイにしか見えてこず、やってる事が単なる暴力団なり半グレと同じレベルなのが残念極まりない
恐らく原作者が暴力と全く無縁だったのだろうが、そこらの解像度が低いと暴力をふるう側にもある恐怖やルサンチマンが分かりやすくしか見えてこないので、それらを一般化して想像して心が揺さぶられるといった作用が発生していない
誰にでも行使できる強力な手段である暴力の中でも禁忌とされる殺人を生業にしている人達の日常とは恋愛とはどうなのだろうか?ともう少し思いはせた方が話として膨らみが出るのではないだろうか
そこを観ている側に考えさせてからでないと折角の独特なシチュエーションが無意味になってしまう
また、出てくる登場人物もテンプレばかりなので無理やり感が出てしまう
女性暗殺者をちゃん付けで呼ぶ眼鏡愛妻家上司だとか、片言で喋る何人かすらわからん事務員には観てて少し狼狽えた
要はこういうシチュいいよね!の舞台装置として都合よく配置された設定や人物なので、最初の数分のやり取りにぐっと来た層以外は特にカタルシスの無い展開が続く
シリアスな展開だろうと基本は恋愛が軸なので用意された話にしか感じず、変な言い方だが登場人物達がドラマを演じる役者にしか見えてこないし、仮にそれが意図的であってもドラマとして作る為の土台が余りにも薄くないか?と思う
ゴタゴタうっせーんだよ!いい感じの恋愛じゃねぇか!と言われたらそういう作品だよねごめんねとしか返せないが、やはり恋愛ものだとしても登場人物や時代や道徳・倫理の問題と葛藤に直視したヴァイオレット・エヴァーガーデン等と比べて薄い印象は受けてしまう作品ではあった